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【女子ワールドカップ】主力選手辞退の困難を乗り越えてラ・ロハが初優勝!

2023年8月30日 |

FIFA 女子ワールドカップ
オーストラリア&ニュージーランド大会2023
決勝 スペイン(6位) 1-0 イングランド(4位) @スタジアム・オーストラリア
2023/08/20 20:00キックオフ(日本時間8/20 19:00) NHK BS1
スペイン:オルガ・カルモナ 29’

スペイン、イングランドともに初の決勝進出となった試合。スペイン代表ことラ・ロハが、1年前のUEFA欧州女子選手権2022準々決勝でイングランドに競り負けした雪辱を見事に果たし、過去最多32チームが参加したFIFA女子ワールカップ2023で初優勝の快挙を成し遂げた。

スペインは準決勝でジェニファー・エルモソをMFに、センターFWにサルマ・パラジュエロを配した4-3-3で挑んだ。対するイングランドは準決勝と同じ両サイドにウイングバックを置く3-4-1-2で挑む。その配置通り、イングランドは開始早々からロングボールで相手ディフェンスの背後を狙い、スペインは細かいパスワークで相手ペナルティエリア内への侵入を試みる。そして開始5分、こぼれ球にローレン・ヘンプが反応してシュートを放つがキーパーの正面。対するスペインも積極的にプレスを試みて相手ゴール前にクロスを上げるが、イングランドがうまく対応してシュートには至らない。

前半10分、ボール保持率はスペインが上回るが攻めきれず、対するイングランドは縦に攻める推進力が高く縦に切り込んでの突破を試みるがスペインのディフェンス陣が阻止。前半16分にはイングランドのローレン・ヘンプがクロスをダイレクトに合わせるがクロスバー直撃。前半20分にもヘンプがシュートを放つがキーパー正面と決めきれない。

一方のスペインも前半17分にビッグチャンス。最終ラインを上げて相手ペナルティエリアに攻め込み、クロスで入ってきたボールをアルバ・レドンドがゴール前でシュートするも、イングランドのGKメアリー・アープスがナイスセーブ。前半20分にもクロスを阻止と、高さで敵わないスペインは徹底してサイドから低いクロスを入れるがゴールに至らない。そしてイングランドはロングボールや縦の切り込みから前線のヘンプへつなげるが、ヘンプが放った3本のシュートはどれもネットを揺らすことはできずと、両チーム共に特色を出した戦いを見せるが決めきれない攻防が続く。

試合が動いたのは前半29分。ボールを奪ったテレサ・アベレイラから左ウイングのマリオナ・カルデンテイにボールが上がり前線へ。そのカルデンテイの後ろからサイドバックのオルガ・カルモナが猛スピードで上がってきて、駆け込んだ左足で地を這うような強烈シュート。ボールはゴール右端に吸い込まれた。

1点のビハインドを負ったイングランドはプレッシャーを前へと上げて縦パスからのゴールを何度も試みるが、前半戦終盤はボール回しに長けたスペインが終始優勢。逆にロスタイムにはスペインのパラジュエロにゴールまであと数センチというシュートを撃たれてハーフタイムを迎えた。

後半戦。1点を追うイングランドはFWアレッシア・ルッソを今大会3得点3アシストを決めている主軸のローレン・ジェームズに交代。さらにMFレーチェル・デーリーをFWクロエ・ケリーに交代させ、3トップ4バックの形を作る。そして後半9分には右サイドのケリーから上がったクロスをゴール前に駆け込んだヘンプが本日4本目のシュート。だがボールは枠外へ。さらに後半13分、15分とクロスを上げるもシュートには至らず。

その隙をついたスペインは後半17分、ボンマティがシュートを撃つも僅かにクロスバーの上。さらに後半19分、カルモナが戻したボールがカルデンテイからパラジュエロへ渡ってシュートするも枠外。この際、カルデンテイとイングランドのMFキーラ・ウォルシュとの攻防でボールがウォルシュの手に当たったとしてVAR判定。結果はハンドでペナルティキックとスペイン絶好のチャンス。だがエルモソがゴール右へ蹴ったボールはGKメアリー・アープスの腕の中へ。

この時点で残り20分。アープスのビッグプレーでギアを上げたイングランドはブロンズ、ジェイムズとシュートの猛攻をかけるが、スペインGKコールがファインセーブを連発。スペインは後半45分に温存していた主力のアレクシア・プテジャスを投入。アディショナルタイムは13分あり、後半47分にはスペインのSBオナ・バトルが前線に出てシュートするも、GKアープスが片足でスーパーセーブと両者とも譲らない攻防が続く。

得点しないと負けるイングランドは後半52分からGKアープス以外の全選手が前に出るが、ボールの扱いに長けたスペインがゴール前に運ばせない。そして後半59分、ゴール前に上がったクロスをスペインが防ぎ、最後のコーナーキックをGKコールが掴んで試合終了。昨年9月に待遇改善を求めて15人の選手が代表入りを辞退する騒動が勃発。最終的に12人の主力選手を欠いて出場したスペインが、下馬評を覆して初の栄冠を手にした瞬間だった。

今大会の得点ランキングは日本の宮澤ひなた選手が5得点のトップでゴールデンブーツを獲得。さらに日本はグループステージCの第3節、4-0で今大会唯一スペインを下しており、準々決勝で日本を下したスウェーデンは3位。今大会は日本の女子サッカーの実力が世界トップレベルだと改めて感じさせられた。だがそれゆえに、力をつけて大会に挑む強豪国以上に研鑽を重ねる必要がある。一度は勝ったスペインの優勝という結果を受けたなでしこのさらなる奮起に期待したい。

Profile

小池昌敏

1967年神奈川県生まれ。編集兼ライター歴30年以上のフリーで活躍するベテラン記者。スポーツはサッカーから野球、釣りまで何でも大好きだが、基本的に身体を使うのは苦手で観戦が専門。


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