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【サッカーアナリストによる月刊アナリスト サッカーの見方篇vol.15】

2023年11月30日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしています。下期は「サッカーの見方」をテーマにお送りします。

今回のサッカーの見方は、「スカウティング目線での見方」です。

定期的にお送りしてきた当内容ですが、それは常に「単にサッカーをどう見るか」の部分でした。

しかし、サッカーの見方として、対象チームや目的に応じてそれは変わります。その中で「スカウティング目線での見方」について深堀りしたいと思います。

スカウティングとは2種類あり、1つは選手のリクルーティングなどを行う「スカウト」ですが、もう1つは「相手の分析」です。今回は後者の方です。

私はプロ生活7年間において、対戦相手分析を担っていました。

自チームの試合を分析するわけではなく、次にあたる相手の分析をすることを対戦相手分析と言いますが、これに関しては普通の試合を見るのとは目線が変わります。

当該試合を見てから過去の試合をさかのぼる場合もあれば、事前に過去の数試合を見てから当該試合を見るケースがあります。どちらにしても、まずは試合を見る前に情報を集めます。

ホームページや様々なサイトをチェックして今のそのチームの現状を整理することもします。また、所属メンバーや基本配置、得点・失点の傾向や監督のコメントなどまで調べます。

それを踏まえた上で当該試合を見るようにするので、この時点で監督や選手のコメントから推察したり、システムや前節の課題などまで把握していることがほとんどです。

その中で、キックオフから15分間は相手とのシステムのかみ合わせを見たり、テンションを見たり、この試合におけるテーマを紐解いたりしています。

具体的には、4つの局面(自陣での攻撃、敵陣での攻撃、敵陣での守備、自陣での守備)を整理しながら、そのチームにとってのそれは前節から修正されたことなのか、同じことが起こっているのか、この相手だからこその事象なのかなどを見ます。

特に最後の「この相手だからこその事象なのか」について見られるようになると、次節、自分たちと戦う時にどう対処してくるのかが分かるようになります。

文語だと難しいのですが、ではどういうことが起こると「自分たちにとっても」の話に結び付けられるのでしょうか。

対戦相手分析の試合を見ている時、この試合の彼らの相手は自分たちではありません。その相手を自分たちに当てはめながら見るようにするのです。

自分たちのシステムだけではなく、ストロングとウイークや、選手個々のストロングとウイークも当てはめます。

この試合で見せた対戦相手のストロングとウイークは、自分たちのそれとマッチングさせるとどう起こるのかを予測しながら見ます。

例えば、当該チームの敵陣での攻撃において、右サイドからクロスを上げてFWがヘディングシュートを放ったシーンがあったとします。これは、自分たちにとって左サイドの守備ですね。また、ペナルティエリア内の守備ともなります。

これは自分たちにとってストロングの部分なのか、ウイークなのかで対応が変わります。

そのシンプルな例だとしても、より具体的には右サイドハーフと右サイドバックに加えてボランチがどの位置でサポートするのか、FWは1枚なのか2枚なのか、逆から入ってくるかどうかなど複数のことを確認しているはずです。

これらを自分たちの「自陣での守備」において当てはめます。それが、“驚異”となり得るのであれば映像として共有するでしょう。

そうでなければ、映像として共有することはしません。別のところに焦点を置くようになります。といった具合です。

スカウティング目線での見方は、実際の現象をただ追いながら見ていることは少なく、こうした「照らし合わせ」を行いながらとなります。皆さんも実践してみてください。

今回はスカウティング目線での見方についてお伝えしました。

ここで書き切れない細かい話や動画解説などはオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。

それでは、また次回お会いしましょう。

Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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