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【女子ワールドカップ】なでしこ惜しくも準々決勝で散る…!

2023年8月16日 |

FIFA 女子ワールドカップ
オーストラリア&ニュージーランド大会2023
準々決勝 日本(11位) 1-2 スウェーデン(3位) @ イーデン パーク,オークランド
2023/08/11 19:30キックオフ(日本時間8/11 16:30) NHK
日本:林穂之香 87
スウェーデン:イレステット 32,アンイエルダール 51(pen.)

ファンタスティックな戦いを見せていたなでしこは、スウェーデン相手に現実的なプランを選び、ほとんど輝きを見せられないままワールドカップから去ることになった。

日本はノルウェー戦からひとり、左サイドウイングバックを遠藤から杉田に代えてスウェーデンに臨んだ。スペイン戦と同じく2列のブロックを低い重心で構えてのロングカウンター狙い。スペイン戦は清水に対するアンディションを高く上げた変則の3-3-3-1にして日本にハイプレスをかけてきた。3人、4人と人数をかけて囲んでくるスウェーデンのプレスをかわせば日本は一気にビッグチャンスになる。もちろん、スウェーデンはリスクがあることを十分に理解した上で日本を封じ込めようとした。パスを受けても出しどころがなく、囲まれてドリブルで抜け出せず、ロングボールはスウェーデンの選手が壁となって蹴らせなかった。長谷川と長野がポジションを取りながらパスコースを作っていたが味方の呼応が遅く、トライアングルのラインを形成できず孤立してボールロストを繰り返した。

アメリカと120分戦い、日本に比べてスタミナ面で不安があるスウェーデンは押し込んで先制点、追加点を奪い、ゲーム展開を有利にするためにハイプレスを仕掛けて攻撃的に振る舞った。日本の最終ラインの裏を狙うパスが通るようになって日本はずるずる下がることが多くなっていく。そして32分、ゴールから見て遠目左のポジションからアスラニがボックスに放り込んだボール、GK山下がパンチングで弾いたもののクリアできず。スウェーデンが何度もシュートを放ち日本が何度もブロックするが、エリクソンのシュートのこぼれをイレステットが右足でネットを揺らした。さらに38分にはアンイエルダール、42分にはアスラニが決定的なシュートを放つが、GK山下がセーブして前半は0-1で折り返した。

守備を固めてロングカウンター狙いだったが、前線に繋いでも中盤の押し上げが遅く、サイドへの展開もできず、ボールをキープすることもできず、攻撃の形をまったく作ることができなかった。枠内シュートどころかシュートすら打てず、スウェーデンのプラン通りにリードを許してハーフタイムとなった。

後半に入り、ほとんど上がれなかった杉田に代えて遠藤を投入して左サイドの活性化を図る。しかし49分、VARからオンフィールドレビューとなり、主審のスタウブリはスウェーデンCKにおいて長野のハンドの反則があったとしてスウェーデンのPKを指示する。51分、アンイエルダールがGK山下の反応とは逆のゴール左に決めてリードを2点に広げた。

2点が必要になった日本は、田中美南に代えて植木を投入。スウェーデンに高い位置からプレッシャーをかけてゴールへの執念を見せる。ボックスの中でボールを受けるシーンも多くなり、63分藤野、68分長谷川、71分藤野と決定的なシーンを作る。さらに74分植木がボックス内で倒されてPKを獲得する。ファールを受けた植木が蹴るがGKムショビッチにコースを読まれ、シュートもクロスバーに嫌われた。

植木はゴール左上を狙って蹴っていて、彼女の勇気はすばらしい。同じシーンが繰り返されたとしても彼女が蹴るべきだと思う。その一方で9番を背負っているなら決めてほしいという思いもある。このゲームのビッグポイントであり、データで植木のPKを分析していたスウェーデンと無策に見えた日本の差でもあった。


87分、ゴール正面左のFKは藤野が蹴るがこれもクロスバーに嫌われゴールラインを超えられなかった。直後、左サイド遠藤からのクロスをニアで清家がシュート。こぼれたところに林が飛び込んで決めたものの、10分のアディショナルタイムをスウェーデンがしのぎ切って、日本の冒険は準々決勝で終わりを告げた。

日本は1日休養が長く、スタミナ面ではスウェーデンより有利であり、アジリティも高く、前半からハイプレスをガンガンかけていれば違った結果になっていた可能性がある。もちろん、裏を取られて惨敗したかもしれないが、リスクを取らないサッカーをしても何も勝ち取れない。それは男子のクロアチア戦で学んだことではなかったか。

今大会のなでしこはまだ若い。守備的なサッカーから攻撃的なサッカーへ。今大会で見せたティキタカとダイレクトサッカーのコンビネーションの精度とポジショニングをもっと高めればふたたび世界を制することができるだろう。

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


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