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【サッカーアナリストによる月刊アナリスト サッカーの見方篇vol.11】

2023年7月31日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしています。下期は「サッカーの見方」をテーマにお送りします。

今回のサッカーの見方は、フォロースルーとアフターモーションというテーマでお送りします。

フォロースルーとは、球技において球を打つ・投げる・蹴るなどした後に、腕・足を最後まで振り切る動作のことを言います。サッカーで言えば当然、ボールを蹴った後の足の振り方ですね。

人間どうしても「ボール」を追ってしまいます。子どもにボールを渡したときもそうですよね。小さい子どもにボールを見せ、大人がそれを蹴った瞬間にボールを追うと思います。「大人の蹴った後の足(の振り方)」を見続ける子どもは少ないでしょう。

人間の本能とも言えますが、動物でも同じです。犬などとボールで遊んでいると、投げた・蹴った瞬間にボールに向かって走り出しますね。中にはまったく興味なくてボーッとしている犬もいますが(笑)。

サッカーを見る時に「ボールばかり見ないように」とはよく言われるでしょう。それはおおよそ、例えばボールとは逆サイドの選手を見ましょうとか、攻めているときの後方の選手たち(=リスクマネジメント)を指すことが多いと思います。もちろん、それも大事です。

一方で、そのボールを蹴った人のフォロースルーにも注目しましょうということです。特にクロスやシュートシーンでは注視してみてください。選手によってフォロースルーの仕方が違います。大きく振り上げる選手もいれば、インパクト重視で振り上げない選手もいますし、ジャンプしている選手もいます。どれが正解かではありません。それぞれ、自分に合った「強さ」や「精度」を考えて行き着いた形なので、それも含めて見ることで選手の特徴や癖なども見られて面白くなります。

また、蹴った後のフォロースルーは主に大きなアクションのとき(クロスやシュートなど)に起こり得ますが、そうでない時も同様の視点があります。

例えば普通のトラップ、(ショート)パスなどがそれに当たりますが、この時は「アフターモーション」に注目です。

フォロースルーは主に「蹴った“足”のその後」ですが、アフターモーションは全身のイメージです。簡単に言えば、出した後の動きですね。トラップやパスなど攻撃時のプレーだけでなく、プレスに行ったけど外された後の守備の動きとかもそれに当たります。

連続性のある動きが特徴のサッカーなので、ボールを持っている・持っていないに関わらず選手の動作を見続けることは新たな発見があります。ボールばかりを追うのではなく、ボールと逆サイドを見れているから良しとするのではなく、フォロースルー含めて選手個々の「動きのその後」まで見られるようになったらさらにサッカーの奥深さも分かると思うのでチャレンジして欲しいですね。

パスを出した足で前に出ているのか、肩を前に出して前傾姿勢になっているか、どのタイミングで首を振り直したかなどもアフターモーションのうちの1つです。

優れた選手はこれらをスムーズにこなしますし、安定感があります。プロの試合で意識しながら見続けて、アマチュアの試合や子どもたちの試合を見ると違いにも気づくでしょう。

サッカーの見方は正解もなければ自由ですし、縛られる必要もないものです。ただ、せっかく見るのであれば幅広い見方ができれば楽しいですよね。上記の話は今からでもできる見方の1つなので、選手個々の「プレー後」の動作を追いながら基準を作ってみてください。

ここで書き切れない細かい話や動画解説などはオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。 それでは、また次回お会いしましょう。

Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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