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オフサイドの新ルールをテスト導入! 適用されればサッカーがより攻撃的に!

2023年7月12日 |

国際サッカー連盟(FIFA)は今年7月、2023/24シーズンへ向けて、新しいオフサイドのルールをテストすると発表した。スウェーデン男子U-21リーグ、女子U-19リーグ、イタリア、オランダのリーグで試験導入される。

現在のオフサイドのルールは、攻撃側選手の手と腕を除く身体の一部でもオフサイドライン上にいる守備側選手より前に出ていた場合に反則となる。つま先、肩、頭の一部が数㎝あるいは数㎜出ていた場合でも判別できるVARの半自動オフサイドテクノロジーによって、ワールドカップカタール大会では多くのゴールが取り消された。優勝したアルゼンチン代表は、初戦のサウジアラビア代表戦で3回ゴールネットを揺らして、3回とも半自動オフサイドテクノロジーでゴールを取り消されて逆転負けを喫した。攻撃側選手は、守備側選手との駆け引きの他に、半自動オフサイドテクノロジーという最新技術もケアしなければならず、守備側選手はオフサイドを取りに行くアグレッシブな守備が可能だった。

導入試験が行われる新しいオフサイドのルールは、攻撃側選手の手と腕を除く身体の一部でもオフサイドライン上の守備側選手に残っていればオンサイドになる。現行のルールとはまったく逆で、守備側が半自動オフサイドテクノロジーのジャッジもケアしながらプレーしなければならない。最終ラインの裏へ抜け出せれば攻撃側には圧倒的有利で、踵の一部でも守備側選手にかかっていればオンサイドになるのだから、攻撃側は何度でも何度でもチャレンジしてくる。オフサイド判定は激減するだろう。モダンサッカーはラインを上げるコンパクトなサッカーが特徴だが、これまで以上に最終ラインを破られるストレスにさらされることに、どれだけのチームが耐えられるだろうか。

最終ラインの攻防はサッカーの醍醐味で、オフサイドのルールは何度も変更されてきた。昨年もオフサイドに関わる守備側選手の「意図的なプレー」と「ディフレクション」の違いについてのガイドラインを明らかにする文言が追加されている。攻撃側選手がオフサイドポジションにいた場合、味方のパスを受けてプレーするとオフサイド、守備側選手がクリアしようとしてミスしてパスが繋がった、あるいはオウンゴールとなったときはオンサイド、至近距離で当たったボールがこぼれてパスが繋がったときは、オフサイドと主審のジャッジが世界中どこでも一定となるようにFIFAから通達が出されている。今回の変更も、より攻撃的なサッカーを目指すためのものと推定される。

FIFAは、一定の期間の導入テストを行い、アーセン・ヴェンゲル氏(元名古屋監督、元アーセナル監督)を中心とするFIFAの委員会で導入テストの結果を検証して、導入するべきかどうかの話し合いを経て、正式に導入するかどうかの決定を行う予定となっている。

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


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