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「日本代表とJリーグの戦い方」ボランチゼミナール〜Additional Time vol.2
2021年6月7日 |
「日本代表のピッチと(ジュビロで戦う)Jのピッチ、それぞれ戦い方が違う」
蹴球人・福西崇史の言葉は、奥深くミステリアスだ。特に現役時代を振り返る言葉は、どれも興味深い。
「ジュビロ(磐田)では、好き勝手やってました」
(前回掲載のGayaRインタビューで)当時のジュビロ磐田が、サッカー人生において転機になった、というエピソードを明かしてくれた。

「日本代表とJリーグでは、明らかにプレーを変えていたように見えた」と尋ねると、こんな回答が返ってくる。
「日本代表には、僕よりも色々な面で優れている選手が沢山いるので。」
戦術の違いやトレーニングの内容などは決して明かさずに、微笑みながらサラりと話してくれた。
プロのサッカー選手として自身が矢面に立つ表現。そして、解りやすいアナウンスも会話風に添えられた。
「例えば、今日の〇〇番の選手なんですが、どう見えました?」
「うーん、微妙でしたけど。動きが、こうもっちりとしてたような」
「実は、この試合で言うなら(システムや戦術がフィットせず)あわないだけなんです。」
「あわない??うーん、選手が調子悪いように見えますけれど。」
「そう見えると思いますが、実は違うんですね。」
ファン・サポーターから見れば「なにをやってんだ!」と思うようなワンプレーでも、実際のピッチでは全く違う現象が巻き起こっているらしい。
限られた空間や一瞬のミスは、選手にしか解らない。選手が全てを背負い表現者となり、90分走り続けなければならない、厳しい世界だ。

インタビューを続けるうちに、なんだか「サッカー解説者の福西さん」が「Jリーグファミリー」をピッチの外から見守っている、いや庇っているように感じる瞬間がある。憶測だが当時「好き勝手やってました」と語るジュビロというクラブは、もしかすると。「なんでも言い合える家族」のような存在だったのかもしれない。
Jのクラブが家族のような存在ならば、日本代表という場所は、どんな存在なのか?知識欲から興味が湧いてくる。
「日本代表には、僕よりも色々な面で優れている選手が沢山いるので。」
いや、そんな感じだった気がしない。あの世代の代表メンバーのなかで、福西さんは常に相当な動きをしていたし、結果も残しているはず。私たちメディアも、ファン・サポーターも、スタジアムやテレビの前で戦いを見守るなか、何度もボランチの動きに感銘していた。
「危うく、助かった・・」
「ひやりとしたが、良かった」
「よくぞ、勇気あるプレーで飛び込んでくれた!」
選ばれし者だけが集う国際Aマッチのピッチは、当時のジュビロ磐田・23番、福西崇史選手にとってどんな場所だったのだろうか。インタビューで聞き出せなかった気もするし、あえて記事にしたり無理に聞かなくともいいのかもしれない、そんな気持ちになった。
冒頭に「ミステリアス」と書き出したのは、そんな個性的な振る舞いからだ。
蹴球人・福西崇史による“ボラゼミ語録”は「ボランチゼミナール〜Additional Time」と題して、magazineのWeb上で複数回に渡って披露される。次回は、スタジアムの裏側・ミックスゾーン、選手たちの個性に着目する。
サッカーと競技は違えど、ここ数日様々な物議を呼んでいる、ある大会の話題に着目したい。テニス・全仏オープンのメディア対応を自ら拒否し、メディアとアスリートのあり方を提唱した、日本が誇るアスリート、大坂なおみ選手の言動だ。
「ボランチゼミナール〜Additional Time」では、偶然にもメディアとアスリートの関係性についてインタビューを記録していた。解りやすく愛情深い、福西崇史氏の言葉から、サッカーにおけるメディアとアスリートの関係性を紐解いてみたい。
リアルタイムスポーツ実況アプリ「GayaR」内のコンテンツ「ボランチゼミナール」のライブ配信は、感染症対策を徹底し行われています。なお、ライブ配信後に敢行されたインタビューは、オンラインにて実施されたものを掲載しています。

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GayaR Magazine 編集部
リアルタイムスポーツ実況アプリ「GayaR(ガヤール)」の番組情報はもちろん、スポーツ&エンタメ、街の話題などを発信するWebメディア「GayaR Magazine 」。GayaR Magazine編集部には、編集者・記者・ライター、プロデューサー、エンジニア、デザイナーが在籍しています。彼らは、専門分野の枠を超え、メンバーそれぞれの個性を活用し、編成・編集・執筆に携わっています。