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【サッカーアナリストによる月刊アナリスト サッカーの見方篇vol.14】

2023年10月31日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしています。下期は「サッカーの見方」をテーマにお送りします。

今回のサッカーの見方は、「ステップワークを見る」です。

サッカーは止める、蹴る、運ぶだけではありません。その前にもっと根底の「動く」があります。サッカーを戦術的に見る時も、必要な視点です。

その「動く」において大事なのは「ステップワーク」です。

プロ選手のトレーニング風景を見たことがあるでしょうか。トレーニングピッチでボールを触っているだけではなく、コーディネーションのトレーニングも頻繁に行います。

その主な目的は自分の体を思うように動かせるようになるためであり、公式戦においていち早く動き、相手より先に動き、ゴールを取る・防ぐためです。

そんなステップにも、様々な種類があります。

サイドステップ、クロスステップ、フロントステップ、バックステップ、これらの「切り替わり」など。

自分が走った時をイメージすれば多少は分かるでしょうか。足がどうなったら(ステップによって)次の足が出やすいか、試してみても良いかもしれません。

では、それらは実際のサッカーの試合においてどう使われているか。これを見られるようになるとさらにサッカーの見方が深まり、奥が深いことを理解するかもしれません。

動画があれば具体的に説明できますがテキストのみなので、少々分かりづらいこともあるかもしれませんが、いくつか具体例を出していきましょう。

攻撃シーンにおいて。現代サッカーはビルドアップを構造的に作り上げるチームが増えてきました。その時、各選手のポジショニングをまず見るでしょう。センターバック(CB)、サイドバック(SB)、ボランチ(VO)、サイドハーフ(SH)、フォワード(FW)のように11人がどこに配置されているのか。そして、相手はそれに対してどのように配置され守備をしようとしているのか。

では、そこからボールが動いてインプレーとなった時、各選手のステップワークまで見られると面白いです。例えば、GKから右のCBにボールが出たとします。相手がプレスをかけてきたのでもう1人の左のCBに横パスをします。パスを受けようとする受け手の左CBは、どのようなステップでボールを引き込むでしょうか。

自分にプレスをかけてくる相手の角度によって、あるいはボールの強弱や左右差によって変えるはずです。パスが弱ければフロントステップで迎えに行くでしょうし、相手が中から来れば少しバックステップでサイドにズレながら縦パスが出せるか探るかもしれません。

別のシーンで回想してみましょう。

SHの選手がワイドでボールを受ける時に、予備動作の動きで相手を引き離し、足元でボールを受けるケースがありますね。その時、ステップはどのようになっているでしょうか。単に「予備動作をしました」とも言えるわけですが、「勢いをあえて見せるために最初の騙しのステップをクロスステップして予備動作してました」と言えたら良いですね。

あるいは守備のシーン。

相手のクロスが上がってくる前に、最終ラインの選手たちはどんな体の向きで、どんなステップワークで準備していたのか。これまで見られるようになると、なぜクリアがミスになってしまったのかや、なぜ相手を外してしまったのかなどが分かるようになってきます。

サッカーに正解はなく、どんなステップを踏んでも良いわけですが、不思議とミスやアクシデントが起こる時は、セオリーと異なるステップを踏んでいたなどのような事象があるものです。

ちなみに、アナリストが対戦相手を分析する際も、当然ながらこのようなステップワークまで注意深くチェックします。クロス時の対応はポジショニングだけでなく、跳ね返す力があるかどうかだけでなく、サイドステップを有効に使って左右に素早く動ける体勢を取れるのか、クロスステップすることが多くて反転に時間を要するのかなど。

少々細かい話ではありましたが、サッカーの見方として実践できると楽しくなるはずなので、もしあまりその観点で見ていなかった場合は、チャレンジしてみてください。

今回はステップワークについてお伝えしました。

ここで書き切れない細かい話や動画解説などはオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。

それでは、また次回お会いしましょう。

Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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