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【月刊アナリスト センターバックの縦パス】

2023年9月16日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしていきます。

上旬は昨季王者の横浜F・マリノスを中心にお送りしています。

前回はボランチを中心にお届けし、FC東京戦ではその渡辺選手がアディショナルタイムにゴールを決める劇的な勝ち方をしました。

ただ、あまりに大きな代償は、畠中選手の長期離脱となる怪我でしょう。

その後、アウェイゲームが続いたためGayaRでのライブ配信も行った横浜FC戦と柏戦では、その影響もあって連敗となりました。

今回は、今後も焦点が当たるであろうセンターバック(以下、CB)にフォーカスします。

横浜FMにとって、CBに求められる大きな役割の1つがビルドアップの前進役です。最後方からボールを供給し、ボランチやトップ下、ウイングやFWへラインを突破するようなパスも求められながら、相手の出方を見ながらサイドバックにつけて目線を変えることも必要です。

出場時間に差があるため、90分換算として出した「自陣での縦パス」の数値がこちら。

(図:CB 縦パス)


データ提供:Opta by Stats Perform

こちらも前回同様に、誤差の範囲と捉える人もいるかもしれませんが、平均的に縦パスを多く出していたのは畠中選手だったことが分かります。

ただ出せば良いわけではなく、通せないといけません。

(図:CB 縦パス成功率)

データ提供:Opta by Stats Perform

成功率で見ると、畠中選手と角田選手が58%台。上島選手は本数が少ないですが、成功率は70%と高い数値を出しています。

当然ながら本数が増えるほど成功率は下がっていく傾向にあるので、上島選手は今後、どれだけ本数を増やしながらクオリティを維持できるかですね。柏戦では古巣ということもあって気負いしたのか、ミスが多かったですが、今後のパフォーマンスには期待です。

ここでやはり気になるのは、エドゥアルド選手の成功率。半分以下という数字は改善したいところですね。

横浜FC戦では立ち上がりからミスが多発してしまいました。もちろん、彼自身のクオリティを上げることだけでなく、受け手との距離感やタイミングなども微調整しなければ成功率は上がっていきません。

自陣での縦パスを引っ掛けられればカウンターの起因となりやすいですし、自分たちのリズムも出ません。これもあまり深掘りするとスカウティングになってしまうので避けますが、いずれにしても、両CBのビルドアップにおける改善を図っていかなければ、攻撃面のリズムだけでなく守備面で悪影響が出てしまうでしょう。

一方で、エドゥアルド選手の良い点を挙げておきます。

(図: CB A3rdパス)

データ提供:Opta by Stats Perform

こちらは、数値が低いですが、アタッキングサードへのパス数です。

積極的に仕掛けのパスを出していけるのが特徴でもありますね。CBとして、どのエリアでボールを持っているのか、相手のプレス強度やスピード感はどれくらいかに応じてプレー選択を変えられればこの数値はそのまま武器となります。

プレッシャーをかけなければアタッキングサードに差し込んでくるCBだとして、相手からすれば必ず圧力をかけなければいけない選手ということですからね。守備陣形が少し動くことも想定されるわけです。

ここからチームはリーグ戦に加えて、勝ち上がったルヴァンカップ、アジアチャンピオンズリーグなど試合が続きます。今月末には、首位ヴィッセル神戸との1戦も控えています。

畠中選手が不在となる中で、他のCBたちの「縦パス」の質によって勝敗が分かれることもあるかもしれません。自陣におけるCBの縦パスの頻度と精度、敵陣におけるアタッキングサードへの仕掛けの縦パスの頻度はチェックしてみたら面白いと思います。

次回(1ヶ月後)は、首位攻防戦の神戸戦の振り返りや、アジアチャンピオンズリーグの2試合を経て見えるだろうグループステージの展望をお届けする予定です。

ここで書き切れない細かい話や動画解説などはオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。

それでは、また次回お会いしましょう。

Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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