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【月刊アナリスト 20節を終えて】

2023年7月18日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしていきます。

上旬は昨季王者の横浜F・マリノスを中心にお送りしています。

前半戦を終え、6月24日から後半戦へ突入しました。横浜FMはサンフレッチェ広島と湘南ベルマーレに勝ち、上位直接対決の名古屋グランパスとの戦いで引き分け、首位をキープしました。

今回は、この3試合をまとめて、選手個人のデータを深掘りしていこうと思います。

スターティングメンバーの変更はほぼなく、ボランチの喜田選手から藤田選手、小池選手から永戸選手くらいで3試合を戦いました。

チームスタイルは当然のように変わらず、攻撃はビルドアップから丁寧に運びながら前線4枚を生かす形。時に4-2-4で繋ぎ形が多くなってきました。

では、自陣の繋ぎにおいて選手の関わりはどうか。

データ提供:Opta by Stats Perform

キーパーとセンターバックの数が多くなるのは必然ですが、注目したいのはその成功率です。数は選手によって出場時間が異なるので差は出ますが、成功率に差は出にくいものです。

90%以上の成功率を記録している上島選手や渡辺選手の質は素晴らしく、起点となれていることがうかがえます。一方で、エドゥアルド選手や両サイドバックの選手は80%かそれを切る数値なので改善が必要かもしれません。

天皇杯のFC町田ゼルビア戦でも、選手は変わりましたがサイドバックを狙われて失い、ショートカウンターで失点することもありました。

ビルドアップのスタイルや型が分析されやすいからこそ、起点を増やす必要があり、出し手のみならず受け手のタイミングを早くしたり、飛ばすパスを増やしたりなど工夫も必要でしょう。

データ提供:Opta by Stats Perform
データ提供:Opta by Stats Perform

自陣を越え、敵陣で点を取るフェーズに関しても見ていきましょう。ここは数値が高く拮抗していてScatter Chartだと見づらかったため棒グラフで表示しました。

ここでもトップの関わりを見せたのは渡辺選手。リンクマンとして、時にアタッキングサードへのチャレンジとして関わり続けられているのは彼の特徴でもありますね。その質も高くキープできており、成功率もチーム内トップ。安定感も増してきましたね。

ボランチがアタッキングサードやボックス内に関われるかどうかはこれからも生命線となるでしょう。名古屋戦では藤田選手が後ろから絡んで得点を決めたように、ヨーロッパでも主流となっている「Box to Box」ができるボランチは評価を高めていくでしょう。

次に、アタッキングサードへの進入数を見てみます。

データ提供:Opta by Stats Perform

これは当然のように前線の選手が多くなるわけですが、最も進入を記録したのはエウベル選手で、次にヤン・マテウス選手。ここでの注目は右サイドバックの松原選手ですね。サイドバックでありながらアタッキングサードへの進入数がチーム内で3番目に多いのは彼の特徴でもありますし、湘南戦の先制ゴールは彼がもたらしました。

逆に気になる点は、トップ下の西村選手の少なさです。名古屋戦では前半で交代となってしまいましたが、それでも、トップ下ながらアタッキングサードの進入数がトップ5と比較しても10以上少ないのは懸念点でしょうか。

しばらく代わりを務めると思われるマルコス・ジュニオール選手や他の選手に期待ですね。

最後に守備について少し振れましょう。

データ提供:Opta by Stats Perform

以前に比べて90分のハイプレスという印象はなくなりましたが、デュエルの勝率や強さにはこだわっているでしょう。

最もデュエルを記録したのは最前線のアンデルソン・ロペス選手。ビルドアップ時に降りることも増えたCFがデュエルで勝ってくれるとチームとしても前進できますし、アタッキングサードで勝てればチャンスを作れます。50%以上は記録したいですね。

センターバックの選手は軒並み高い成功率を保てている中で、ポテンシャルを示したのは植中選手でしょうか。途中からの出場が少しずつ増えてきた中で、この数値にもこだわりながら続けて欲しいですね。

図の左下に部類された選手らは奮起が必要でしょうか。デュエルだけが評価基準とはなり得ませんが、横浜FMにとってこの数値の基準は重要でしょうから、伸ばしてもらいたいものです。

向こう1ヶ月はセルティックやマンチェスター・シティとの親善試合等も組まれており、この対戦でまた基準を上げることができれば、8月の攻勢も期待できますね。またGayaRの配信等でもお会いしましょう。

ここで書き切れない細かい話や動画解説などはオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。

それでは、また次回お会いしましょう。

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Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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