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【ベガルタ仙台】惜しくも逆転されるも、試合ごとに見せる確実な成長

2023年4月26日 |

明治安田生命J2リーグ 第11節
藤枝 3-2 仙台 @ 藤枝総合運動公園サッカー場
2023年4月23日 14:03 Kickoff
藤枝:渡邉 45,久保 85(渡邉),矢村 90+3(久富)
仙台:中山 63(相良),郷家 65(エヴェルトン)

前節岡山戦よりも素晴らしいサッカーだった。藤枝のハイプレスにアジャストして守備陣形を整え、カウンターでゴールを奪いに行った。ロングフィード一辺倒だった開幕戦とは違い、ショートパスをつなぎ、サイドにパスを散らしてチャンスを作った。

前半終了間際に藤枝のGKが蹴ったロングフィードに、DFとGKが重なるミスから先制ゴールを許しても諦めなかった。60分、3枚替えをした3分後に中山の今季初ゴールで追いつき、その2分後に郷家が今季4ゴール目となる逆転ゴールを決めた。圧倒的にポゼッションされる展開で、藤枝の攻撃をしのいで自分たちのターンで決定機を何度も作り、仙台のスタイルが固まってきている。

このまま勝ち切れば次節へ向けて飛躍できたのだが、2点とられたら3点とるという藤枝の攻撃サッカーに逆転されて力尽きた。藤枝はハイプレスで仙台に圧力をかけ続けてミスを誘い、同点ゴール、逆転ゴールをたたき込んだ。藤枝はセカンドボールへの反応が抜群で、逆転ゴールのシーンは矢村がトラップした時点で勝負ありだった。

仙台のサッカーは試合ごとに成長している。サイドアタックだけではなく、中央のスペースを広げて飛び込むコンビネーションも、プレスを受けてもパスをつなぐスキルの高さも、開幕時よりはるかに上のレベルになっている。時間を作ること、スペースを作ることはサッカーで重要なことだ。決定的な場面で、完璧なトラップをすれば時間もスペースも十分な状態でシュートが打てる。一瞬でターンができれば相手を置き去りにできる。仙台はゴール前で時間もスペースも作れるようになってきている。

それでも、J3から上がってきて初年度の藤枝には届かなかった。藤枝が勝ち、仙台が負けた差はわずか1点だが、簡単には埋まらない差だ。予測力が圧倒的に違う。藤枝はネガティブトランジション、ポジティブトランジションでも動き出しが違った。ルーズボールへの反応も藤枝の出だしが早かった。ボールがこぼれるところに一直線に飛び込めば、相手より早くボールをコントロールでき、時間を稼げるのだ。

アディショナルタイム、決勝ゴールは右サイドの競り合いからボックス内にこぼれたボールを矢村が予測して飛び込んでシュートを打った。GK林にできることはほぼなく、シュートが体のどこかにあたればくらいだったのではないか。

J2のシーズンも4分の1が終わった。1位町田との勝ち点差は10、2位大分との勝ち点差は9。自動昇格圏内とは大きく差をつけられてしまった。プレイオフ圏内6位の藤枝とも勝ち点差6と離されつつある。今季J1復帰を目指す仙台にとっては厳しい序盤だった。怪我人も多くメンバーを固められなかった。

しかし、プレーはよくなっている。サッカーとしてわくわくするシーンも増えてきた。まだシーズンは4分の3も残っている。藤枝とホームでのゲームもある。今節少し足りなかったことをトレーニングで意識して成長させて、J1昇格への逆襲につないでほしい。

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


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