ナビスコカップ、食育、N-BOX、家本政明氏、スカパー、DAZN、新しい景色。Jリーグはこんな言葉とつながっている。川淵三郎氏が「時期尚早と言う人間は100年経っても時期尚早と言う。前例がないと言う人間は 200年経っても前例がないと言う」と、反対勢力を喝破して推し進めたサッカーのプロ化は今年30周年を迎え、日本のスポーツシーンになくてはならないものとなった。

1992年、第1回ナビスコカップはJリーグのプレ大会として開催された。オリジナル10と呼ばれる、鹿島アントラーズ、浦和レッドダイアモンズ、ジェフユナイテッド市原、ヴェルディ川崎、横浜マリノス、横浜フリューゲルス、清水エスパルス、名古屋グランパスエイト、ガンバ大阪、サンフレッチェ広島が総当たりのリーグ戦を行い、上位4クラブが準決勝へ進出した。準決勝、決勝とゴールを決めてヴェルディ川崎の優勝に貢献した三浦知良は56歳となる今季も現役で、ポルトガルリーグ2部オリヴェイレンセでプレーしている。

ブラジル代表ジーコが日本サッカーリーグ2部だった住友金属サッカー部（現鹿島）に入ったとき、「プロのサッカー選手に菓子は必要ない」とジャンクフードを食べる若手に激怒したことは有名なエピソード。スパイクの手入れをきちんとするとかロッカールームをきれいに使うといったサッカーに取り組む姿勢の改善は、鹿島だけじゃなく日本のすべてのサッカー関係者に影響を与えた。

ジュビロ磐田のN-BOXシステムは、FIFAクラブ世界選手権2001で世界の強豪と戦うために鈴木政一監督が考案したフォーメーション。名波浩を真ん中に置いて藤田俊哉、奥大介、服部年宏、福西崇史がサイコロの5の目のように配置される名波システムで、サイドプレーヤーがいないという特徴がある。グループCでレアル・マドリー（スペイン・UEFAチャンピオンズリーグ1999-00 優勝）、アクラ・ハーツ・オブ・オーク（ガーナ・CAFチャンピオンズリーグ2000 優勝）、ロサンゼルス・ギャラクシー（アメリカ・CONCACAFチャンピオンズカップ2000 優勝）と戦うことが決まっていたが、スイスの国際マーケティング会社ISLの倒産により大会自体が中止となってしまった。当時日本最強だった磐田が、ジダン、フィーゴ、ラウール、ロベルト・カルロス、イエロ、カシージャスらを擁する銀河系軍団レアル・マドリーと公式戦で対戦できなかったのは残念だった。

Jリーグでもっとも嫌われ、もっとも愛された審判が家本政明氏だ。FUJI ZEROX SUPER CUP 2008 鹿島 vs. 広島のゲームでイエローカード11枚、レッドカード3枚が提示されるなど大荒れとなり、不利な判定を受けたと鹿島のサポーターがピッチに乱入する騒動となったのをはじめ、選手が大けがをするほどのファールを見落としたり、ファールをした選手を失念して別の選手にレッドカードを提示するなど、選手との信頼関係を構築できていなかった。Jリーグの試合では家本氏が審判に割り当てられたクラブのサポーターから不満が出るほどだった。しかし、2008年には規則の奴隷だった家本氏は、選手とのコミュニケーションを心がけるようになって変わっていった。Jリーグの審判から勇退する2021年12月4日J1最終節横浜Fマリノス vs. 川崎のゲーム終了後、両クラブの選手達が花道を作り、ファンは感謝の横断幕を出すなど、「いえぽん」として選手からもファンからも信頼される審判となっていた。

2002年ワールドカップ日韓大会の放映権をCS放送のスカパーが獲得して全試合を無料放送したことで、スカパー加入者が一気に増えた。J1全試合放送も始まり、ファンは応援するクラブのゲームをリアルタイムで観られるようになった。2017年の放映権契約更新でJリーグはDAZNと10年契約、総額約2100億円という大型契約を結び、Jリーグはネット環境があればJ1、J2、J3と全試合ライブで観られるようになった。

新しい景色は2022年ワールドカップカタール大会で日本代表が目指した場所だったが、Jリーグも30年の間に世界に通用するコンテンツとなった。バルセロナで活躍したイニエスタが神戸で活躍したり、川崎でデビューした三笘がブライトンでスーパーゴールを決めたり、世界ともつながっている。いつか、ワールドカップでベスト8よりももっと高い、一番高いところへ行けるように。