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【月刊アナリスト 番外編 オフシーズンの過ごし方】

2023年1月15日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしていきます。

今回は、国内リーグがオフシーズンのため、特定チームのレポート等ではなく、アナリストのオフシーズンの過ごし方としてお送りします。

あまり知られていないであろうクラブチームのスタッフのオフシーズンの過ごし方ですが、アナリストは完全休養しているわけではありません。

シーズン中は試合がどんどん迫ってくるため、自チームや対戦相手チームの分析やら映像編集やらで時間を費やし、知識のアップデートや他リーグの情報を集める余裕がありません。したがって、このオフシーズンにそのブラッシュアップを行う人が多数です。

ヨーロッパなどは12月も1月も試合があるため、海外に行って現地観戦する人もいます。国内にいても映像が見られるので、これまでの試合を一気に見る人もいます。

ただ試合を見てもアップデートには繋がらないため、アナリストはこのオフに新たな試みをすべきです。自分も実践していましたが、これまで扱っていなかったソフトウェアに手を出してみることです。

現代は、映像やデータを扱えるソフトウェアが多数存在しますが、アナリストはシーズン中に新しいものを覚えるほど時間はありません。まとまった時間が取れるオフシーズンだからこそ、これまでと違うソフトを触ってみて、必要であれば新たなシーズンで導入することも検討します。

ソフトの一例を参考までに載せておきます。

・Sports Code
・Hudl
・FL-UX
・SPLYZA
・Metrica Sports
・Coach Paint
・Adobe Premiere
・ProVision
・Piero

これ以外にも多数あります。映像を加工するもの、データを検索するものなど。これらを全部使いこなすわけではありませんが、アナリストはITに強い役職ですから、常に新しいものを取り入れていく必要があります。

オフシーズンの中でも、チームが始動する前と後で分かれます。上記はすべてチームが始動する前の話ですね。束の間の数週間でいかに自分自身をアップデートできるか。休む暇はありません。

そして、チームが始動してからシーズンが開幕するまで、アナリストはどう過ごすのか。これも参考までに記していきたいと思います。

チームは、監督以下スタッフから、選手を含めると、昨季とまったく同じメンバーで挑むということはありません。必ずどのクラブもテコ入れを図り、人選が変わります。そうなれば、新たに迎え入れた人たちとの連携やコミュニケーションを取っていかないとシーズン中に歯車が狂うことがあります。

始動してすぐはこれらを重視しながら、トレーニングの補佐を行います。撮影、映像編集、キャンプの準備等々ですね。

そして数日のみトレーニングするとすぐに、キャンプ地へと向かいます。アナリストはこの時から、チーム内のコンセプト作りに励みます。

監督が変わっても変わらなくても、チームにおける今季のコンセプトを決めます。昨季から変わることもあります。それはスタッフ間で共有するだけでは足りません。最も重要なのは選手に伝えることです。どう伝えるか。

言葉だけでは伝わりきらないため、映像やデータを駆使する必要があります。どういうサッカーを目指すのか、どんなプレーが良くてどんなプレーが悪いのかを共有しなければなりません。その素材を集め、編集し、資料化するわけです。

当然、そうしている最中にも、毎日のトレーニングが入ってきます。キャンプともなれば、午前と午後で2部練習を行うこともあります。撮影しながらデータを取得したり、終わった瞬間から映像を加工したりなど、トレーニング時にもやることは多々ありますが、それに加えて上記のコンセプト資料作りなどを行います。

1月の末ともなれば、各地でトレーニングマッチが行われるようになります。アナリストは対戦相手の分析も担うことが多いので、その試合を視察に行くこともします。そう、開幕の1ヶ月前くらいから、相手の分析が始まっているわけです。

場合によっては試合の撮影が許可されないこともありますから、目で見てメモベースで記録することもありますし、いかに記憶できるかも力量が問われます。

始動前に新しいソフトを覚える方が良いと言ったことが分かると思いますが、キャンプインしてしまうとまとまった時間が取れないのです。

どのチームも続々とキャンプインしているようですね。アナリスト含め、中のスタッフたちが日々どれだけ動いているかは見えないと思いますが、その一端をご紹介しました。彼らの努力が実を結ぶかどうかは、2月に分かりますね。

早いもので、FUJIFILM SUPER CUPの横浜F・マリノスとヴァンフォーレ甲府の試合まで1ヶ月を切りました。新シーズンはどんな幕開けになるのか、スタッフたちの隠れた努力に期待しつつ、その時を待ちたいと思います。

それでは、また次回お会いしましょう。

Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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