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高校サッカーの頂点は「岡山学芸館」

2023年1月12日 |

第101回全国高校サッカー選手権大会 決勝戦
岡山学芸館(岡山県代表) 3-1 東山(京都府代表) @ 国立競技場
2023年1月9日 14:05 Kick-Off
岡山学芸館:オウンゴール25(新谷陸斗),木村匡吾 52(中尾誉),84
東山:真田蓮司 44(北村圭司朗)

岡山学芸館はロングボールを前線に当ててセカンドボールを拾ってサイドに展開、クロスに飛び込んで決定機をものにするサッカーが特徴。準決勝の神村学園戦では左サイドから岡本温叶のクロスを田口裕真が決めて先制。逆転された直後に左サイドを山田蒼が深くえぐってのクロスを今井拓人が素早いターンから沈めて同点。勝ち越された5分後には、左サイドの今井拓人から右サイドの岡本温叶に展開して、強烈ミドルで追いついてPK戦に持ち込んだ。PK戦はひとり目の岡本温叶がど真ん中に決めると、ふたり目の木村匡吾、3人目の山田蒼、4人目の井上斗嵩が左上と、GK広川豪琉にはノーチャンスのコースにきっちり決めて決勝へ勝ち上がった。神村学園は大迫塁がゲームメーカーとしてすべての得点に絡む活躍で二度のリードを奪ったが、岡山学芸館の猛攻を止められなかった。

東山はバイタル付近のこぼれ球を拾ってコンビネーションで中央を突破するスタイル。1点リードされた大津戦では右サイドのCKがファーにこぼれて松橋啓太が密集を突き抜けるシュートで同点に追いついた。前半の豊嶋蓮央のヘッド、後半の真田蓮司のミドルと、こぼれ球に素早く詰めて決定機に結びつける予測力の高さもある。大津はロングカウンターから岩崎大翔がGK佐藤瑞起のセーブを弾き飛ばす強烈なミドルを放ったが、わずかにゴール右に外れるなど再三のチャンスをものにできず、PK戦で涙を飲んだ。

岡山学芸館は岡山県勢として初の決勝進出、東山は京都府勢として46回大会洛北高校以来の優勝を目指す。前半、岡山学芸館は東山の高い最終ラインの裏を取った今井拓人が、右サイドから仕掛けてのクロスを新谷陸斗がオウンゴールにして先制したものの、東山が押し込む展開が続き、終了間際に左サイドの北村圭司朗からパスを受けた東山の真田蓮司が強烈なミドルを突き刺して同点で折り返す。

後半、岡山学芸館はハイプレスをかけて東山からボールを奪うと素早くサイドに展開するサッカーで圧倒。田口裕真から中尾誉へ左サイドでつないだクロスを木村匡吾がヘッドで突き刺して勝ち越し。終了間際には右サイドからのロングスローを木村匡吾が技ありのゴールを決めてダメを押した。岡山学芸館は6本のシュートで3点を奪う決定力の高さで東山を振り切った。一方の東山は右サイドの阪田澪哉の仕掛けからのクロスをフリーで受けた真田蓮司が吹かし、左サイドの真田蓮司のクロスに飛び込んだ阪田澪哉のヘッドはクロスバーを叩くなど決めきれないシーンが目立った。

ロングボールを最前線に当てて、こぼれ球に素早く詰めてセカンドボールを拾ってからの展開という高校サッカーのトレンドを突き詰めた両校。だが岡山学芸館はサイドをうまく使ってチャンスをモノにしたのに対し、東山は相手が固めた中央をこじ開けるサッカーにこだわりすぎた。東山はもっと早い時間帯からサイドに開いて、岡山学芸館の最終ラインのギャップを広げる工夫ができれば違う結果となったかもしれない。岡山学芸館はハーフタイムで修正して後半の2点をもぎ取った。サイドへの素早い展開を何度も繰り返して東山を押し込む時間帯が長く、最後まで守りに入らず3点目を奪うなど魅力的なサッカーを見せてくれた。

岡山学芸館、初優勝おめでとうございます。また来年も素晴らしいサッカーで高校サッカーシーンを沸かせてくれることを期待しています。

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


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