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W杯2022 日本代表の奮闘を振り返る(後編)

2023年1月4日 |

FIFA ワールドカップ カタール大会 2022 グループE 第3節
日本 2-1 スペイン @ ハリファ
2022/12/01 22:00キックオフ(日本時間12/2 4:00)
ABEMA、フジテレビ系列
日本:堂安 48,田中 51(三笘)
スペイン:モラタ 11(アスピリクエタ)

スペイン、日本、コスタリカ、ドイツ。すべての国にグループステージ突破の可能性があり、敗退の可能性がある第3節。日本は勝てば文句なしでノックアウトステージへ進出するが、負けると敗退が決まる。2021東京オリンピックサッカー準決勝で、日本は延長の末0-1でスペインに敗れている。日本はこのゲームで、DF吉田、板倉、MF遠藤、田中、久保、堂安、相馬、FW前田、上田の9人がピッチに立ってスペインのスタイルを体感している。一方のスペインはGKシモン、DFのパウ・トーレス、ガルシア、MFのペドリ、ソレール、ウイングのオルモ、そして、決勝ゴールを決めたFWアセンシオの7人がおり、日本にとってグループステージ突破をかけたリベンジの舞台となった。

ティキ・タカはスペインの代名詞で、ショートパスをつなぐスタイルは圧倒的なポゼッションをスペインにもたらす。簡単にボールを奪えず、プレスをかいくぐるスキルもある。オリンピックではスペインの猛攻を日本が耐えてカウンター狙いだったが、ワールドカップでは序盤からハイプレスを仕掛けてスペインを慌てさせた。

11分、右サイドのアスピリクエタのクロスに飛び込んだモラタがヘッドで先制しても、最終ラインにハイプレスをかけ続けて何度もチャンスを作った。プレスをかけられることに慣れているスペインの選手がミスをしてロストするほど、前田の追い回しは効いていた。

後半、日本は堂安と三笘を投入して勝負をかける。48分、左サイドで三笘、前田がプレッシャーをかけてGKシモンが逆サイドに展開すると、伊東がマークを捨ててボールにチャレンジ、こぼれ球を堂安が拾って同点ゴールを突き刺す。すると51分には堂安のクロスをゴールラインギリギリで三笘が活かし、田中が押し込んで逆転に成功する。日本が勝負をかけてきた立ち上がりの攻勢に対し、スペインは後手に回って対応できないまま失点を重ねた。

負けると敗退の可能性があるスペインは、フェラン・トーレス、アセンシオ、ファティと攻撃的な選手を投入したが、攻撃のスイッチを入れるウイングは日本の粘り強い守備で機能せず。攻撃的な伊東、三笘が最終ラインまで戻ってスペインの猛攻をしのぎ切った。

ドイツ戦、スペイン戦とゲームプラン通りにプレーして結果を出した。ボールを一方的に支配されながらも、プレッシャーをかけ続けてチャンスを作り仕留めるサッカーが世界の強豪を倒すのに有効だと証明したのだ。

FIFA ワールドカップ カタール大会 2022 ラウンド16
日本 1-1(1-3 Pens) クロアチア @ アルジャノブ
2022/12/05 18:00キックオフ(日本時間12/6 0:00)
ABEMA、フジテレビ系列
日本:前田 43
クロアチア:ペリシッチ 56(ロブレン)

目標のベスト8まであと1勝。2002年日韓大会でトルコに0-1。2010年南アフリカでパラグアイ相手に0-0、PK戦3-5。2018年ロシア大会でベルギーに2-3。4回目の挑戦はロシア大会ファイナリストのクロアチアが相手で、4年前のベルギー戦のようなゲームができれば勝つことができるはずと期待が高まるゲームとなった。

日本は前田が鬼気迫る追い回しでハイプレスをかけて伊東、鎌田、堂安が連動する。遠藤、守田がプロテクトした中盤でこぼれ球を拾ってという狙いだったが、クロアチアはアバウトに前線めがけてロングボールを蹴ってきて、日本の攻撃に真正面から付き合わなかった。

日本がハイプレスからのショートカウンター狙い、クロアチアがボールロストを厭わない前線へガンガン上げるスタイルのかみ合わせからオープンな展開となったゲームは、お互いにビッグチャンスを作るスリリングな展開となった。

43分、日本は右サイドのコーナーキックをショートコーナーにするオプションから堂安のクロスを吉田が落として前田が蹴り込んで今大会初めて先制する。デザインされたスペシャルプレーをいくつか試していた日本がゴールに結びつけた。

後半に入ってもオープンな展開はかわらず。56分に右サイドのロブレンからのクロスをペリシッチが高い打点のヘッドで押し込み同点に追いつかれた。サイドの優位性を保てなくなった日本は、浅野と三笘を投入して局面の打開をはかる。

だが、日本は三笘を活かすことができなかった。ユラノビッチがマークしてモドリッチがフォローに入るほど警戒されて、前を向くことも難しい。谷口から三笘へのパスコースは切られていて通せない。鎌田がタメを作って展開していたが、交代で鎌田がいなくなると日本の攻撃は停滞してしまう。コスタリカ戦でもあったが、最終ラインから縦パスで三笘につけるだけではなく、中盤経由やトップに当ててのリターンなどバリエーションがなければ世界のトップでは通用しない。今後の課題だろう。

延長前半終了間際に三笘の突破から決定的なシーンを作るがGKリバコビッチの正面。延長後半はクロアチアの攻勢に防戦一方となった。日本もクロアチアも消耗していたが、最後まで動けていたのはクロアチアだった。

PK戦は南野が止められたのがすべてだった。三笘、浅野、吉田のときにGKリバコビッチはキッカーから見て左サイドに跳んだ。右利きの選手は左側を狙う方が強いシュートが撃てる。データなのかセオリー通りなのか、キッカーの癖を見たのかはわからないが、浅野以外は全員が止められて日本の新しい景色は4年後に持ち越しとなった。

次のワールドカップへ向けて、日本は主導権を持ったときに攻め切る武器が必要だろう。ドイツ、スペインを破るすばらしいカウンタープレスがあるが、コスタリカ戦、クロアチア戦ではのらりくらりとかわされた。4年後はカウンタープレスも対策される。勝つためには日々研鑽してアップデートするべき。ベスト8とさらなる夢、ワールドカップトロフィを掲げるために。

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


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