Feature
W杯2022 日本代表の奮闘を振り返る(前編)
2022年12月28日 |
FIFA ワールドカップ カタール大会 2022 グループE 第1節
ドイツ 1-2 日本 @ ハリファ
2022/11/23 16:00キックオフ(日本時間22:00)
ABEMA、NHK
ドイツ:ギュンドアン 33(PK)
日本:堂安 75,浅野 82(板倉)
2022年4月1日(日本時間2日)、ドーハで行われた組み合わせ抽選会から7か月。森保監督はドイツ、コスタリカ、スペインとどう戦うか何度もシミュレーションを繰り返したに違いない。ノックアウトステージへ確実に進むためには勝ち点6が必要だし、ベスト8のためには1位抜けしたい。コスタリカに勝利したとしても、ドイツかスペインか優勝経験国のどちらかから勝ち点3を奪わなければならない。熟考を重ねて、勝ち上がるための26名を招集して、ドイツ戦勝利のための11人をピッチに送り出した。

慎重な立ち上がりのドイツに対し、日本は立ち上がり早々にビッグチャンスを迎える。8分、遠藤がギュンドアンをチェック、鎌田がボールを奪うと右サイドの伊東へ展開。ドリブルで持ち上がってボックス内へダイアゴナルの速いクロスを送り、全力でゴール前に走り込んだ前田がネットを揺らした。オフサイドでノーゴールとなったものの遠藤のデュエル、鎌田のパス、伊東の突破、前田の速さをドイツに見せつけた。さらにプレスをかけてパスを引っかけてカウンターを狙うが、ドイツはカウンタープレスでピンチの芽を摘み取り、短く速いパスで日本のプレスを回避することに成功する。日本はボールを奪ってもあっという間に囲まれて、ロストして守備に追われるシーンが目立つようになる。
31分、キミッヒからボックス左サイドへの展開でフリーのラウムに渡ったところで、GK権田がスライディングタックルでラウムを倒して笛が鳴った。PKをギュンドアンが決めてドイツが先制する。1回目のタックルも2回目に後ろから押し倒したプレーもどちらもファール。慌ててしまったのか、GK権田はラウムの足下に飛び込んでしまった。
中盤でキミッヒが動き回りながら高速のショートパスをうまく散らしてくると日本は捕まえることがまったくできず、決定機を何度も作られた。ハベルツのゴールはVARチェックでオフサイドとなり取り消しとなったが、一方的なドイツペースだった。
後半、森保監督は左サイドの久保に代えて富安を投入。右サイドの酒井、左サイドの長友をウイングバックとする3バックにシステム変更。最終ラインを高く上げて、ハイプレスをガンガンかけるスタイルでゴールを奪いに行く。二度三度とカウンターからピンチとなってもまったくひるまず、ボールを追い続けた。ピンチもあるがチャンスもあるワクワクするサッカーで、森保監督が用意したプランBが完全にはまった。
そしてターニングポイントがやってくる。ドイツはミュラーに代えてホフマン、ギュンドアンに代えてゴレツカを投入。直後、キミッヒのパスから猛攻を仕掛け立て続けの決定的なシュートを放つ。絶体絶命のピンチをGK権田がすべてビッグセーブ、ドイツから日本へ流れを引き戻した。そして三笘、浅野、堂安、南野と攻撃的な選手を立て続けに投入した超攻撃的な布陣でプレスをかけると、ドイツはパスの出しどころがなくなり中盤が機能不全に陥った。
75分に日本の攻撃が実を結んで同点。左サイドから三笘がハーフスペースへ仕掛けてボックス内にパス。南野のシュートはファーに浅野が飛び込んだこともあってGKノイアーが正面に弾き、堂安が押し込んだ。さらに83分、リスタートから板倉がロングフィード。シュロッターベックの裏を取った浅野が完璧なトラップから、角度のないところでGKノイアーのニアをぶち抜いて逆転する。カナダ戦の出来からは別人のような南野、浅野のプレーだった。アディショナルタイムは7分あったが、1点を守りに入っていたドイツは消耗していて流れを取り返すことはできないまま。GKノイアーをあげて同点を狙いにいったが、日本は集中して守り切った。
FIFA ワールドカップ カタール大会 2022 グループE 第2節
日本 0-1 コスタリカ @ アフメドビンアリー
2022/11/27 13:00キックオフ(日本時間19:00)
ABEMA、テレビ朝日系列
コスタリカ:フレール 81(テヘダ)
コスタリカ戦に勝てば決勝トーナメント進出が近づく日本。森保監督はドイツ戦からスタメンを5人代えてきた。トップは上田で、コスタリカはリトリートして守り縦方向へのカウンターを持ち味としていて、ボックス内へ正確なパスを当ててキープする狙いだと思われる。

前半立ち上がり、日本は左サイドから相馬が仕掛けてのクロス、作り直して長友のクロスと積極的な仕掛けを見せた。さらに右サイドから堂安がクロスをあげてゴールを狙ってきた。しかし、中央を固められると中盤でパスを回す、ポゼッションのためのポゼッションとなってゲームは硬直化する。パスの出し手にも受け手にもアイディアが乏しく、リスクを負う仕掛けもなく、決定的なチャンスを作れないままに前半が終わる。
後半から前田、伊藤を投入。3バック気味にして中盤を厚くすると、守田が浅野とのワンツーから抜け出し決定的なシュート。GKナバスのビッグセーブにあったがゴールの匂いがする攻撃ができた。さらに左サイドから相馬が仕掛けてシュート、遠藤がターンしての仕掛けで得たFK、伊東が抜けだそうとして得たFKとチャンスは作っていた。先制ゴールを奪う猛攻を仕掛けるタイミングだったが、仕掛けは単発で、ポゼッションで何度も作り直してコスタリカに息をつかせてしまった。最終ラインの裏を狙うパスを何度も蹴ってくるが、コスタリカはラインをかなり低い位置に設定していて、GKナバスの守備範囲か、ゴールラインを割るばかり。フィジカルコンタクトを嫌ったのか、引き分けでもいいと考えたのか、時間経過とともに前半と同じような消極的なサッカーに終始してリスクを負わない。ドイツ戦では選手全員が同じパッションで勝利を目指していたが、コスタリカ戦ではちぐはぐさが目立った。前線と最終ラインとの距離が間延びしていてフォローがうまくいかなかった。気持ちで守りに入っていなかっただろうか。
そして、失点の場面。三笘のボールロストからキャンベル、ボルヘスとつないで前線へのフィードという単純なプレーで、伊藤、吉田のクリアが小さく、守田も滑ってテヘダのラストパスがフレールへ通る。吉田と伊藤の間、フリーで受けたフレールのシュートはGK権田の頭上を越えてネットを揺らした。コスタリカは日本の攻撃をしのいでワンチャンスでゴールを奪う。大陸間プレーオフでニュージーランドを振り切った戦い方を貫き、日本はまんまと術中にはまってしまった。
アディショナルタイム6分の間に2回三笘の仕掛けからビッグチャンスを作ったが、時間がなく負けている状況で、最終ラインで何度も作り直し、回し続ける弱気なところばかりが目立った。結果的に勝ち点3どころか勝ち点1も取れず、スペイン戦で勝ち点を取りに行かなければならない状況に自分で追い込んでしまった。

Profile
今里浩紀
1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。