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【サッカーアナリストによる月刊アナリスト サッカーの見方篇vol.4】

2022年12月30日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしています。下期は「サッカーの見方」をテーマにお送りします。

前回は後半編をお伝えして、基本的な4局面の見方を記しました。今回は、セットプレーの見方としてお伝えします。

「攻撃のCK」

・キッカー情報:利き足、ボールスピード、球種
・配置:中の人数、ショート対応、セカンド、残り
・狙い所:ニア、中央、ファー
・相手の配置確認:ゾーン?マンツーマン?併用?弱い所は?
・中の動き方:誰が最初に動く?ブロックする?

まずは攻撃のCKから。おそらく、攻撃CK、攻撃FK、守備CK、守備FKの中で最も見る機会が多く、そこまで不自由なく見られる人が多いのではないでしょうか。ところが、細かく見ようとすると、たった数十秒では上記すべてを把握できないこともあります。

上記の見るべき点も一部であり、他にも強い順を探ったりトリックプレーがあったりショートコーナーがあったりと、まだまだあります。そんな中で、まずは上記の基本的な項目を押さえられるようになると、そのチームの狙いも見えてきたりして面白くなると思います。

「攻撃のFK」

・ボールサイド情報:キッカーは1枚?2枚?
・配置:中の人数、セカンド、残り
・狙い所:ニア、中央、ファー
・相手の配置確認:ゾーン?マンツーマン?弱い所?
・中の動き方:誰が最初に動く?ブロックする?
・クイックに始める?セットして時間かける?
・蹴る位置によって手法変える?

CKと基本的に見る項目は似ていますが、FKは場所が変わるので、それに応じて両チームの振る舞いは変わります。CK付近であればCKと同じように守るチームもあるので、攻撃側のFKもそれに合わせて狙いを持ってチャレンジします。また、直接狙える場所で行うこともあるので、キッカーの枚数が変わることもあるのがFKです。

ワールドカップの3位決定戦でクロアチアがトリックプレー(サインプレー)でゴールを決めたように、CKよりも多様な試みができます。あの時、キッカーは2枚いました。モドリッチが蹴るフリをしてマイェルが縦に蹴り、ペリシッチが折り返してグヴァルディオルが決めました。CKではできないプレーですね。上記に合わせれば、5番目の「中の動き方」として、ペリシッチが動き出した時、よく見ると14番のリバヤが相手をブロックしています。こういったところも見られたら良いですね。

「守備のCK」

・守り方の基準:ゾーン?マンツーマン?併用?
・ゾーンの配置:全員戻る?空中戦強い選手はどこ?
・マンツーマンの配置:ストーンの位置と選手の把握
・併用の配置:ゾーンの枚数と配置、マンツーマンの順番
・相手の中の人数は?それにどう対応する?
・ショート対応されたら誰が出る?
・GKは出る?出ない?それはどういう時?

次に守備です。守備のセットプレーを見るのは苦手という方が多いかもしれません。単にゾーンかマンツーマンかなどを見るだけでは不十分ですので、上記を参考にしてみてください。

守備は基本的に配置から考えますが、そこから、ボールが蹴られる前後にどういう動きをするかチームや選手によって異なります。もちろん、相手がいるので、見るべきはボールと相手になります。

また、リアクションとなるため、いかに事前に準備できていたかで初動のスピードが変わります。例えばショートコーナーをされた時、誰もボールに行けていないケースがあったとすると、これは明らかに共有不足で、それをされたら誰が出るかなどは決めていることが多いので怠った選手がいることを意味します。

映像で見るのと、実際にその場(ピッチ内)にいるのとでは視野がまったく違うので、選手目線で見られるようになるとまた見方が変わってくるでしょう。

「守備のFK」

・守り方の基準:ゾーン?マンツーマン?併用?
・ゾーンの配置:全員戻る?何枚並ぶ?セカンドは?
・マンツーマンの配置:ストーンの位置と選手の把握
・併用の配置:相手の誰をマーク?何を警戒している?
・相手のキッカー2枚の時、壁は何枚?
・前線に何枚残す?
・直接狙える位置の場合、壁は誰が担う?

最後に守備のFKです。よく見るのは、ラインとなって並んで守るケースだと思います。それもよく見れば、何人なのか、どういう順番なのか、並ばない人は誰でどこにいるのかなどもチェックすべきですね。

また、相手のキッカーが2枚の場合、壁は基本的に合わせないといけません。クイックに始められてしまったら壁の枚数が少ないと数的不利で運ばれてしまうからです。

CKとは違い、相手のプレー選択が幅広くなるので、守る側は大変です。相手が何をしてくるか分からないからこそ、明確に分かりやすくラインに並ばせて対応するチームが多いのだと思います。ここに記していませんが、さらに言えば、ラインを整えた中でも、どのタイミングで下がるのか、基準は誰か、GKはどこまで出るかなどもチェックできます。

見るべき項目が多いからこそ苦手になりがちですが、数多くのプレーを見て、新たな発見ができるようになったら良いですね。その一助となれば幸いです。

ここで書き切れない細かい話や動画解説などはオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。

それでは、また次回お会いしましょう。

Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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