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【サッカーアナリストによる月刊アナリスト サッカーの見方篇vol.3】

2022年11月30日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしています。下期は「サッカーの見方」をテーマにお送りします。

前回は、キックオフから45分(前半)までの間の守備編をお伝えしました。今回は、後半編としてお送りします。

「45-60分で見る項目例」
・両チームの選手交代による変化
・両チームのシステム変更はないか
・両チームの選手配置変更はないか
・上記の理由は何かを探る
・自陣攻撃や敵陣守備の形は同じか
・前半最初にみたテンションと同じか異なるか
・ハーフタイムに考えた自分なりの修正点と何が違うか

後半開始と同時に見るものが増えるのは当然ですが、その前に、前半が終わり、ハーフタイム中に整理することも大事です。ノートに書いておいてもいいですし、頭で考えるだけでも良いと思います。

ちなみに、私がプロクラブで働いていた時は、あらかじめ見る項目のところを作ってスカウティングシートにし整理していました。

ハーフタイムである程度整理できたと仮定して、いざ後半が始まるというタイミングで見るものがあります。それは、キックオフ時の選手配置です。最初の配置である程度システムは分かります。ハーフタイムによってどんな修正を施し、それを開始からどう表現しようとしているのかを見ます。

システムは変更していないものの、例えば左右のサイドハーフを入れ替えたりとかをするケースもあるので、ただシステムを見るのではなく、選手も同じかどうかを見ましょう。もし変えていた場合に考察すべきは、負けているのか劣勢なのかなどの状況を加味することです。得点状況などが原因だと判断する場合は、おそらく監督やそのチームは前半の結果を受けて積極的に変化させようとするチームだということが分かるからです。

ハーフタイムの過ごし方はチームや監督によって違います。激を飛ばす人もいれば、良いところを褒めてテンションをあげていく人もいるでしょう。それが、後半の最初の15分でどう表現されるのか。チームの色を見ることができると思います。

一番実践してほしいところは最後の部分。前半の終了と同時に整理するという冒頭の部分にプラスして、では「自分がもしそのチームの監督だったらどうするか」です。その根拠や実践するための方法などをどんどん洗い出し、後半の最初の15分を見た時にその乖離部分を知ることで見方はもっと進化するはずです。起きている事象を追いかけるのは誰でも出来ますので、自分だったらという視点を持ちながら見ることが大事だと思います。この後半開始から15分というのが、それを最も適用できる時間帯ですので、ぜひご参考になればと。

「60-90分で見る項目例」
・敵陣攻撃や自陣守備のパターンに変化はあるか
・自分が思う相手のウイークをついているか
・スピード感の変化はあるか
・疲労感が出た中でコントロールするのは誰か
・途中出場の選手の特徴は何か
・メンタリティを発揮するのは誰か
・バイタリティを発揮するのは誰か

ここまでの時間で両チームのシステム、攻守におけるコンセプトや戦術、選手の特徴などが分かった場合、最後の30分で見るべき点は、1.得点状況による試合の流れの変化、2.選手交代など含む監督の変化、3.選手・ボール・アクションのスピードの変化です。それらを、上記の項目とあわせて見ていければ良いと思います。

もちろん、ここまでに整理できていない攻守の内容があれば、そちらが優先となります。

  1. 得点状況による試合の流れの変化とは、前半であれば、仮に得点or失点しても大幅にやり方を変えることはしないと思いますが、後半となれば時間がなくなってくるために負けているチームは大きく何かを修正しようとします。それによって他方のチームは合わせるのか変えないのか、これが分かれます。それはシステムを変えるかもしれないですし、戦術を変えるかもしれないです。
  2. 選手交代など含む監督の変化とは、ベンチワークです。1.の状況変化をさせようと監督は何を感じているのか。システムを変えた方がいいのか、選手配置を変えてマッチアップの優位性を変えるのか、疲労感を出している選手を下げるのか、コーチと話し合いをするのかどうかなど。当然ながら、ここも自分だったらという視点を持っている方が良いと思います。実際にアクションを起こした場合は、それを記録することをオススメします。いつ、何が起きたのか、なぜ、いま変えたのかを考察できるからです。
  3. 選手・ボール・アクションのスピードの変化とは、1.と2.に影響されますが、選手自身がテンポを上げられるのかどうか。当然疲れが溜まってくる中で、それは相手も同じ。その相手との違いを出すために、突破するために、ギアを上げられる選手は数少ないので、チームにとって重要な選手になります。それぞれの選手のスピード感に変化がなかったとしても、ボールスピードを変えることで攻撃のスピードを上げることもできます。前半はゆっくりボールを動かしていたのに、後半はタッチ数も少なくスピード感も増したのであれば、それは監督の指示なのかハーフタイムの修正点だったのかいくつか考察できます。アクションのスピードは、判断のスピードだったりベンチワークのスピード感だったりを指します。

戦術やシステムも重要ですが、90分のどこを切り取っても同じものが見えるわけではありません。時間帯によって変化が起こりますし、選手やボールのスピード感の変化によっても見え方が変わってきます。したがって、戦術やシステムに時間やスピードを掛け算で見ることができれば、チームも試合も生き物なので、その変化からチームの狙いが分かってくると思います。

最後に、攻守におけるタクトを振るう選手はおおよそ決まっています。それ以外の選手たちの、メンタリティやバイタリティ(活力のような意)まで見られると見方も進化すると思いますので、ぜひ実践してみてください。

ここで書き切れない細かい話はオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。

それでは、また次回お会いしましょう。

Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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