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カナダ戦に見るW杯2022ドイツ戦の予測

2022年11月23日 |

高温多湿のワールドカップは2002年日韓大会以来20年ぶり、しかもヨーロッパ主要リーグは1週間前まで試合があり、多くの国がコンディション調整に重心を置いている。

日本代表も例外ではなく、多くの怪我人を抱えている。カナダ戦では左肩の脱臼から復帰の久保、左内側側副靱帯の怪我から復帰の板倉、右膝の負傷から復帰の田中、右膝内側側副靱帯の怪我から復帰の浅野はスターティングメンバーで出場させて実戦でプレーできる目処が立った。一方で、試合中に脳しんとうを起こした遠藤、左ふくらはぎの違和感を抱えている守田、発熱があった三笘はベンチにも入らず別メニュー。右太ももの負傷の富安はベンチ入りしたものの出場はなかった。

ではまず、先日のカナダ戦から見ていこう。

国際親善試合 日本 1-2 カナダ @ アルマクトゥームスタジアム(UAE)
2022/11/17 17:40キックオフ(日本時間22:40)
日本:相馬 9(柴崎)
カナダ:ヴィトーリア 21(ハッチンソン)、カヴァリーニ 90+5(PK)

カナダはカウンタープレスから縦方向への速い展開が持ち味で、ドイツと似たスタイルのサッカーをする。仮想ドイツとしてうってつけの相手だったのだが。試合では柴崎と相馬がいいプレーでゴールを決めたものの、ボールロストやパスミスが目立ち、ハイプレスはハマらず最終ラインの裏をたびたび取られてピンチを招いた。南野は問題を抱えているのか、ピッチ上で存在感がまったくなく、フリーのシュートもジャストミートできず。山根は勝ち越し機をポストに当てて逃したあとで、ボックス内でスライディングタックルを仕掛けてPKを献上するという経験の浅さを露呈してしまった。本戦前でよかったとも言えるが、カナダに圧倒された内容で課題は多い。

一番の問題点は日本のハイプレスがほとんどかからなかったことだ。カナダはハッチンソンを最終ラインに下げることで数的有利を作って、日本のプレスを回避して左サイド伊藤の裏を狙った。日本の守備対応は後手に回り、コーナーキックに逃げてカナダに何度もセットプレーを与えてしまった。後半、長友が交代で入るとある程度は修正できたが、カナダは守備が軽い右サイドの山根の裏に目標を切り替える柔軟性を見せた。ただ、ハイプレスからボールを奪ってのショートカウンターは全く使えず、攻撃は機能していなかった。

この結果が、23日に行われるW杯ドイツ戦にどう影響するか。

FIFA ワールドカップ カタール大会 2022
グループA 第1節 ドイツ vs. 日本 @ ハリファ
2022/11/23 16:00キックオフ(日本時間22:00)
ABEMA、NHK

ドイツはセントラルMFにキミッヒ、ギュンドアンと、パス精度が高いゲームメーカーをふたり並べて最終ラインの裏を的確に狙ってくる。右サイドのニャブリ、左サイドのムシアラにフリーでパスが通るとボックス内にミュラー、ハベルツら選手がなだれ込んで決定機に直結するため、どう対応するかは勝ち点を奪うための最重要課題となる。日本のハイプレスは研究されていて、ほとんどかからないと思ったほうがいいだろう。ショートカウンターも期待できない。カナダ戦では途中出場の長友が素早く戻って相手に張り付き、プレーを遅らせる粘り強い守備で味方が戻ってくる時間を稼ぎ、カナダに決定機を作らせなかった。ドイツ戦でも同じように素早く戻ってきてワイドからの攻撃に蓋をする、しつこくマークして攻撃を遅らせるなど、何度でもチャレンジしてドイツのビルドアップを潰し続ければ、相手もフラストレーションを溜めてミスが出るだろう。日本にチャンスが巡ってくるターニングポイントは必ずある。

高温多湿に慣れていないドイツは早めにゴールを奪うために、最初の20分くらいは猛攻を仕掛けてくるはずだ。しっかり集中してドイツの攻撃を跳ね返すこと。時間が経過すればドイツのプレッシャーに慣れてくるし、強度も緩みが出てくる。ドイツのプレッシングを交わして前線へフィードできれば、右サイドの伊東、左サイドの相馬が最終ラインの裏を取るシーンも必ずある。ドイツは最終ラインを高めに設定しているため広大なスペースをGKノイアーがカバーするが、GKひとりで前田、伊東の速さに対応するのは不可能。決定機があれば確実に仕留めたい。

リードすればゲームをきちんとコントロールするゲームマネジメントが重要になる。不用意なボールロストやパスミスでカウンターを浴びない、強引な攻めを仕掛けないなど、確実にゲームを終わらせるための約束ごとをしっかり作っておく必要があるだろう。

ドイツは気温も湿度も低い国なので、カタールの30度を超える気温と湿度が高い気候に慣れていない。初戦でコンディションが整っていない選手もいるはずだ。対して日本選手は高温多湿の気候で育ち、最後まで走り切るスタミナもある。勝ち点3獲得はそんなに難しいミッションではない。ジャイアントキリングを起こすなら今大会しかない。

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


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