Feature

J1リーグ最終戦から見えたこと

2022年11月18日 |

明治安田生命J1リーグ 第34節 神戸 1-3 横浜FM
@ ノエビアスタジアム神戸 2022年11月5日(土)14:03KO
神戸:武藤 45+3(酒井)
横浜FM:エウベル 26,西村 53,仲川 73(水沼)

最終節までもつれ込んだ優勝争いは、1位横浜FMと2位川崎に絞られた。勝ち点差は2。横浜FMと川崎の得失点差は11で、横浜FMは勝てば文句なし、引き分けても川崎が11点差をつけて勝たなければ優勝が決まる。今シーズン、神戸との対戦成績は1勝1敗、ACLラウンド16で敗れた借りを返してシーズンを終わらせたい。一方の神戸は前節2位の川崎に敗れており、1位の横浜FMに一泡ふかせて最終戦を飾りたいところだ。

キックオフ直後、神戸はハイプレスで横浜FMを押し込んだ。高い位置でボールを奪ってのショートカウンターから先制ゴールを狙っていた。実際、通れば大迫がボックス内でフリーというビッグチャンスも作った。

ターニングポイントは7分にやってきた。CKの流れから組み立て直して、左サイドボックス角近くから岩田がミドル。右側のポストに嫌われたルーズボールに水沼が飛び込み、GK坪井が押さえたボールをロペスが押し込んでゴールしたシーン。

アシスタントレフェリーはオフサイドのジャッジでVARチェックが入った。VARのポイントは得点かどうかで、水沼の飛び込みはオフサイドか!? 水沼のシュートがゴールラインを越えていたか!? ロペスのプレーはファールではなかったか!? などがチェックされたはずだ。VARオンリーレビューでオフサイドかどうか、ゴールラインを越えたかどうかの判断は終わる。映像でわからない場合は「はっきりとした明白な間違い」とは言えないため、ゴールが認められる。ファールかどうかは主審の判断に委ねられるため、主審が映像を確認するオンフィールド・レビューとなる。

モニターではGK坪井がボールを押さえようとしたところで、ロペスが蹴り込んだシーンが何度も流されていて、ゴールを決める一連のプレーでGK坪井の手を蹴っているように見えた。VAR担当審判はファールがあったという認識があり、すぐにオンフィールド・レビューを提案するべきだった。

結果的に5分も試合を止めたことで試合の流れは変わった。両チームの選手は横浜FMの決定機を何度もウイングビジョンで観たはずで、サイドアタックを警戒したのか神戸のハイプレスはほころびができ、横浜FMは右サイドの水沼、左サイドのエウベルが積極的に仕掛けるようになっていく。26分、右サイドの水沼のアーリークロスに飛び込んだロペスがつぶれて、逆サイドのエウベルがヘッドで先制する。51分、左サイドの水沼のFKからGK坪井がはじいたこぼれを西村が押し込み勝ち越し。73分、右サイドの水沼からのクロスをニアに飛び込んだ仲川が決めて、ダメ押しと両サイドのハーフスペースを徹底的に攻めて神戸を崩しきった。神戸は前線の大迫、武藤に何度も合わせてきたが、前半アディショナルタイムの武藤の同点ゴールだけに抑えられた。ハーフスペースを徹底的に狙ってきた横浜FMは数多くの決定機を作って神戸を圧倒する、優勝にふさわしい戦いぶりだった。

そしてこのゲームこそ、森保監督がカタールW杯の代表メンバーから大迫や古橋を外した理由ではないだろうか。大迫も古橋もストライカーで数少ないチャンスをゴールに結びつける決定力がある。逆に言えば、マークもタイトになり、なかなかフリーではシュートを撃たせてもらえない。事実、大迫は横浜FMの守備を破ることができなかった。一方、横浜FMはハーフスペースから仕掛けて3点を奪っている。ハーフスペースと呼ばれるペナルティエリア角付近はマークが比較的緩く、内へも外へも仕掛けられる。日本代表で言えば、右サイドの伊東、左サイドの三笘がサイドからカットインするときに鎌田や南野に当てるスペースで、ここにパスがきれいに入るとビッグチャンスにつながることが多い。世界最先端の崩しのパターンであり、森保監督はワールドカップへ向けて戦術のひとつとして落とし込んだと観るのだが。どうだろうか。

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


Contact

GayaR Magazineへのお問い合わせはこちら

お問い合わせ