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【サッカーアナリストによる月刊アナリスト サッカーの見方篇vol.2】

2022年10月28日 |

サッカーアナリストの定期マガジンとして毎月2回、決まったチームや決まったテーマでお送りしています。下期は「サッカーの見方」をテーマにお送りします。

前回は、キックオフから45分(前半)までの間の攻撃をお伝えしました。今回は、同時間帯の守備編としてお送りします。

最初の0-15分までの話は、vol.1をご覧ください。もしその内容がすべて分かった上であれば、次のフェーズに移れますので、まずは立ち上がり時に確認すべきことを掌握するのがこの時間です。

明確に時間を分ける必要はありませんが、もし上記をものの数分で確認し終えたのであれば、守備としては以下のような項目を中心に見ていきます。

「0-15分、15-30分で見る項目例」
・プレッシングの強度
・どちらに追い込もうとしているか
・ボランチは前に出るか
・逆サイドの選手は何をしているか
・最終ラインの高さはどこか
・GKはボックスを出ているか
・コンパクトさは何メートルか
・スイッチが入るタイミングは何か

相手がビルドアップをしている前提として、主に敵陣での守備に注視します。もちろん自陣での守備も頻発するはずですが、前段がしっかり見えていないと原因が希薄化するので、まずは上記を確実に抑えます。

相手のビルドアップに対してFWは積極的にプレスを仕掛けるのか、待ち構えるのかを見ます。それは、後ろからの指示なのか、それともFW単独の判断なのかは、FWの顔の向きなどで判断できます。

もし積極的に仕掛けるのだとしたら、追い込み方として、単にボールに突っ込んでいくようなプレスなのか、ワンサイドカットをしっかり狙いながら奪いに行っているのかでチームとしての狙いが見えます。ただFWの動きだけでは判断が難しいので、ここで重要なのはボランチの動きです。FWがプレスを仕掛けているときに、ボランチは何を考えているのか。次のパスコースを読もうとしているのか、相手のボランチなど目に見えている選手をつかまえようとしているのか。同時に、逆サイドの選手も連動して動いているのかまで見られると、中盤での奪い方のコンセプトが見えてくると思います。

後ろの方に目を向けられる余裕が出てくれば、ボールの位置から何メートルの位置に最終ラインがあるのか、実際の数字までパッと言えるようになるといいですね。それが分かれば、コンパクトさを問われたときに、「コンパクトです」と答えるか、「フィールドプレーヤー10人の縦の距離感が平均的に35メートルでした」と答えるかで深度が変わります。

それぞれを約10分間ずっと見られるようになれば、そこから踏み込んでどういう状況のときにボールが奪えているのか、それはどこがスイッチを入れたからなのか、強度や連動性が高かったからなのかという「原因」をさかのぼって考察できるようになっていくと思います。

時間が進み、全体の配置や狙いが少しずつ見えてくる次なる時間帯では、主に下記のようなものを注視します。

「15-30分、30-45分で見る項目例」
・FWはどこまで守備をするか
・逆サイドの選手の絞り具合は同じか
・ボランチはサイドの守備を助けるか
・ボールを奪う選手は誰か
・最終ラインとボールとの距離は同じか
・ラインのアップダウンは頻発するか
・GKはゴールエリアを出るか
・クロスやシュートの対応はどうか
・どの状況の時に選手間で話しているか
・主に自陣守備の陣形や狙いは前の時間帯と同じか

15分までに前からのプレッシングや全体の距離感などを把握し、残りは「ウイークポイントはどこか」に焦点を絞れるようにしておきます。どちらかというと疲れが少し出始める時間帯でもあるので、ほとんどのチームが前からプレスをかけず、センターラインくらいまでFWが降りてきて形を整えることが多いと思います。

では、その形は前からプレッシングしていたときと比べてどうか。崩れていないか、さらにコンパクトになっているかなどを見ることができます。その中で個人に焦点を当てれば、FWは自分の前に対しては当然プレスに行くはずですが、自分の後ろにボールがいったときにどこまで下がるのかは選手や監督の思考によって分かれます。

一方で、右サイドにボールがあるときの左サイドの選手など、逆サイドの選手は歩いているのか、頑張って絞ってきて間を開けないようにしているのかも重要です。これはウイークポイントになりやすい点なので。もし歩いているようであれば、サイドチェンジをされたときに距離感が離れていることからほころびが生まれる可能性があるからです。

それに関連するのですが、ボランチはボールがサイドに展開されたとき、どこまで近付いてサポートするかによって、自分たちのウイークを補おうとする動きかが分かります。もし急いでサポートしにいけば、おそらくそのサイドは守備が強くないことを意味します。逆に距離を保ちながら後ろや逆を気にしながらポジションを取る場合は、そのサイドはある程度サイドMFとサイドDFに任せられるため、こぼれ球を拾うような動きになります。

前の6〜7人の選手の中で(最終ラインとGKを除く)、上記のような動きを見ながら、では誰がボールを奪えるのか。それはストロングですね。相手から奪い返したり、パスコースを読んでボールカットできたりする選手は、チームに1〜2人しかいないものです。これが2〜3人見えるようであれば、守備に重きを置いている監督かなと推察できます。

それ以外の4〜5人(最終ラインとGK)は、基本的には自分の前でボールが動いているため、常に前向きで守備をしています。したがって、見るべきは横のつながりです。ラインのばらつきはないか、あるとしたらどういう時にばらつくのか。ボールが下がった時にどれだけ一緒にラインアップするのか、それは統率されているか。これらをグループで見ることができます。

また、最終ラインを突破されたり、もしくはペナルティエリア付近まで進入されたとき、クロスやシュートにどう対応するかを見ます。クロスを上げられそうなときにDFは相手とボールをどのタイミングで見るのか、首は振れているのか、予測して動き出すDFはいるかなど。シュートに対しては、スライディングしてまで飛び込んでくるのか、怖がって背を向ける選手はいるか、こぼれ球に反応しようとする選手はいるかなど。これらを同時にすべてチェックするのは大変かもしれませんが、ゴール前になればなるほど見るものが多くなるため、頭の整理は大事ですし、あらかじめ何を見るのかを分かっている人ほど整理スピードが早いです。

ここまでのをすべて前半終了までに整理できていれば、後半はその確認と、体力的な問題、選手交代による変化などをチェックすることができます。ここで書き切れない細かい話はオンラインサロンで展開していますので、ご興味あれば検索してみてください。

次回は後半における攻撃編としてお送りします。
それでは、また次回お会いしましょう。

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Profile

杉崎健

1983年6月9日、東京都生まれ。データスタジアム株式会社を経て、2014年からヴィッセル神戸の分析担当に就任。2016年はベガルタ仙台の分析担当を務め、2017年から2020年までは横浜F・マリノスでチームや対戦相手を分析するアナリストを務め、2019年にクラブの15年ぶりとなるJ1リーグ制覇にも貢献。現在は「日本代表のW杯優勝をサポートする」という目標を定め、フリーのサッカーアナリストに転身し、Twitterやオンラインサロン運営などでも活動している。


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