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サッカー観戦のコツ(前編)

2022年9月9日 |

プレーの組み立てを知ると観戦がもっと楽しくなる

サッカーの目的は勝利することで、そのためには相手チームよりも多くのゴールを奪うことが必要になります。ポゼッションサッカー、ダイレクトサッカー、カウンターサッカー、トランジションサッカーと様々なスタイルがありますが、すべてのプレーがゴールを奪うために考えられていると言ってもいいくらいです。

現代のサッカーは、オフェンス(攻撃)、ネガティブトランジション(ボール喪失から守備への移行期間)、ディフェンス(守備)、ポジティブトランジション(ボールダッシュから攻撃への移行期間)という4つの局面が繰り返してゲームが展開していきます。

オフェンスの目的はシュートを撃つことで、ゴールを奪うためにできるだけゴールの近くへボールを運ぶ必要があります。シュートを撃つまでのパスを繋ぐプレーをビルドアップといい、ボールを奪われないようにラストパスを通すと成功です。ディフェンスは相手のビルドアップを邪魔して、シュートを撃たれる前にボールを奪えれば目的達成となります。ネガティブトランジションとポジティブトランジションはそれぞれディフェンス、オフェンスにつなげるための動きで、予測をしていいポジションが取れればプレーしやすくなります。

この点を踏まえた上で、J2第33節 ベガルタ仙台 vs. ジェフユナイテッド千葉のゲームから、両チームがどんなスタイルでゴールを奪うサッカーをしていたのかを観ていきましょう。

仙台のキックオフで始まったゲーム。開始早々、千葉がプレッシングを仕掛けて仙台からボールを奪い、サイドへ展開してファーストシュートを放ちます。仙台はあっという間にボールを失ったのですが、千葉から奪い返すことはできませんでした。ダイレクト志向の仙台は前線に張る中山のポストプレーから攻撃のスイッチを入れていますが、落としを受けたところであっという間に囲まれてパスコースがなくなりボールを奪われています。仙台は即座に千葉の選手にプレッシャーをかけますが、千葉は田口が味方をフォローしてパスコースを作って仙台のプレスをかわしています。素早くワイドに開いてクロスに千葉は3人がボックス内に飛び込んでいるので、ゴールの匂いもプンプンしています。仙台サイドはフラストレーションが溜まり、千葉サイドはしてやったりです。

このままトランジションゲームを続けても仙台はジリ貧です。そこで仙台は個人技でプレスを剥がしにかかります。右サイドのハーフスペースを使って遠藤、中島が何度もドリブルで仕掛けてファールをもらい、セットプレーからチャンスを作ります。25分の中島のミドルがポストに嫌われることなく入っていれば、ゲーム展開は変わっていたでしょう。

ハーフスペースはピッチを縦に5分割したときに中央と両サイドに挟まれた部分で、ボックス内のハーフスペースは特にポケット、あるいはニアゾーンと呼ばれます。角度はつくもののゴールへ向かう仕掛けはシュートもパスも狙うことができる、守備側はケアすることが多くて対応にかなりの神経を使わなければなりません。仙台は今シーズン12ゴールの中山がボックス内で待ち構えており、ラストパスを許すとかなり厄介なことになります。

前半はスコアレスで終了。終了間際まで千葉はボールを奪って走るだけのスタミナが残っていました。仙台も千葉の運動量に慣れて一方的な展開ではなくなりました。試合の鍵は後半戦に託されます。

(後編へ続く ※来週アップ予定)

Profile

今里浩紀

1968年愛媛県生まれ。JFA公認C級コーチ。1982年ワールドカップスペイン大会と「キャプテン翼」でサッカーの面白さに目覚める。出版社で編集者として活動、現在はフリー。


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